「香椎仏教研究会」のホームページ開設にあたって
「香椎仏教研究会」(通称「香椎の会」) は、今から約40年前、香椎の近辺に住む有志3~4名によって、仏教特に親鸞聖人の教えを若い人と共に学ぶ勉強会としてスタートしました。講師は当時福岡教育大学教授の細川巌先生にお願いしました。香椎の公民館(現在は東市民センター)をお借りして、毎月第二木曜日の夕6時半より2時間、メンバーによる発表と先生の講義、質疑応答を行っています。参加者の数は10名前後です。公的施設ですから礼拝等は一切しません。教材は一貫して蓮如上人の「御一代記聞書」を使っています。
現代の日本人の精神生活の現状は、完全にゆき詰まっていて出口が見つからない状態だと思います。それをよく示しているのが、10年以上にわたる年間3万人以上の自殺者の数であり、何十万というウツ病患者や閉じこもりの青年たちであり、さらに毎日のように新聞やテレビで報道される幼児虐待の記事などです。これらの悲劇の根っ子にあるものが自我の病いです。自我の病いとは、他者と比べた自分の値打ちにとらわれ、自分の価値を何よりも大事にし、他より優越したものと認めずにおれない自負心(プライド)の肥大化によるものです。そのためにほんのわずかの自負心の損傷も決して容認できないのです。自負心を傷つけられることを恐れて自我防衛するために過剰反応せずにはおれないのです。
仏陀の無我の智慧に照らされてみると、人間は一人の例外も無く、目に見えない厚い自我の殻の中に入っていて、そこから出ることが出来ないのです。仏教はその自我の殻から私を解(開)放する教えです。したがって自我に満ちた今日ほど、無我の教えを説く仏教が必要とされている時代はないのではないでしょうか。
私たちは本願寺の中興の祖である蓮如上人の教えをずっと学んでいますが、決して上人の心酔者、崇拝者ではありません。しかし上人の晩年の語録には、仏教の考え方の特色がよく出ており、時代を超えて現代に生きる私たちの問題に応える力を持っています。仏教に関心のある人、または生きていく確かな方向や拠り所を求めている人は、このホームページを覗いてみられることをお勧めします。
( 講師 堤 日出雄 )